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開店1周年 商売  カール・ブッセ

ご無沙汰しておりました。

おかげさまで先月28日、Azuki堂開店1周年を迎えることができました。多くの方々のご支援の賜物と感謝申し上げます。

相変わらず右往左往の毎日ですが、先日Azuki堂をご利用の方から嬉しいコメントが郵便振込用紙に書かれていました。「探し求めていた書籍でしたので大変ありがたく思います。今後ともよろしく。」とありました。この「商売」をやっていてよかったなと思えるときです。「もの」をつくるのではなく「右から左へただ動かすだけではないのか」などと、始めた「古本屋・古書店」にどこか心の隅にまだ後ろめたさがある店主ですが、お客様の声が「後ろめたさ」を打ち消してくれるような気がしました。(他にも同趣旨のコメントを幾人かのお客様からいただいております。)

 

「商売」と言えば、先週28日のNHKドラマ「龍馬伝」の中で香川照之演ずる「岩崎弥太郎」が奉行所の獄中で同房者に「10文の饅頭を100文で売りつけるなど詐欺じゃ」というと、その人は「饅頭を必要とする者は100文でも手に入れようとする。そのものに100文で売るのが『商売』じゃ。」と言われ、「そうか商売か」とつぶやき、それからの弥太郎(三菱財閥?の創始者)を暗示するシーンがあった。(正確な場面・セリフの再現ではありませんが。)

 

店主も自らの「商売」のことを思いながらドラマを見ていました。

 

閑話休題

新聞紙上に最近の落語界をめぐる話題が載っていました。「円楽」襲名、「円生」の跡目をめぐる競演会の記事でした。ふと、昔、三遊亭歌奴(のち円歌を襲名)の「授業中」という新作落語の演目を思い出しました。

「カール・ブッセ」か。 

 カール・ブッセの詩「山のあなた」・翻訳は1905年 上田敏「海潮音」より

 

山のあなたの空遠く 「幸(さいわい)」住むと人のいふ。 

噫(ああ)、われひとと尋(と)めゆきて、

涙さしぐみ、かへりきぬ。 

山のあなたになほ遠く 

幸(さいわい) 住むと人のいふ。

 

 

小学校に新しい先生が赴任。国語の授業をはじめるが、その先生はたいへんな訛りで子供たちとなかなか話が通じない。国語の授業がはじまり、教科書に載っているのはカール・ブッセの詩「山のあなた」。はじめに当てられた生徒は緊張のあまり「山のあなあなあな・・・」と同じところを繰り返し読んでしまう。少し艶っぽい話に脱線も。次にあてられた生徒は、読み方に妙なフシがつく。最後に当てられた生徒は広沢虎造(浪曲家)そっくりの声音で朗読をはじめるがいつのまにか浪曲になってしまう・・・。

 

ご存知の方も多いと思いますが、店主が10代の頃、人気落語家のこの「授業中」を何度聞いただろうか。

歌奴師匠の掌の中で、格調高い詩が落語を通じて文学とは無縁の中学生に届いていました。

 

自分の蔵書や古書市で購入した書籍そして、岡崎武史さんのいう新古書店「ブ」の均一でのセドリしたものなどがAzuki堂の「商売」の在庫分となっているのです。

 

梶山季之さんの「セドリ男爵」でもなし、「セドラー」もなあ?

「ブ」でセドリ。「ブッセ」か。と、脈絡もなく連想、店主は一人ごちて、思わず「ニンマリ」してしまいました。

せっせと「ブッセ」 商売!商売!

 

(「おふざけでないよ、お前さん」の声が天から降ってきそうな気配です。おあとがよろしいようで。)